管理人からのお知らせ

当ブログに掲載している写真の無断使用・無断保存はご遠慮ください。ご使用になる前に、必ずご一報ください。

■各種ご連絡やご依頼、ご感想などは、メールフォームから

2021年6月16日水曜日

太平洋を7000キロ旅した八戸の鳥居と、ウミネコの話。

八戸を代表する絶景と言えば、やはり種差(たねさし)海岸。でも、種差海岸は具体的にどこからどこまでのことを言うのかご存じでしょうか?種差海岸とは、蕪島からホロンバイルのある葦毛﨑(あしげざき)展望台、白浜や、天然芝生、そして大久喜(おおくき)漁港や金浜などに至るまでの12キロにわたる海岸線のことを言うんだそうです。今日は、この終着地点にある大久喜漁港の「弁天島(べんてんとう)」のお話。

大久喜の漁港を見守る、弁天島。

大久喜漁港に浮かぶ天然のゴツゴツした岩場を「弁天島」といいます。この島の頂上には「厳島(いつくしま)神社」という神社が鎮座していて、大久喜の人々を見守っています。

この島は蕪島と同じく、ウミネコの繁殖地でもあり、島一面にウミネコたちが巣を作って子育てをしています。
普段は立ち入り禁止で、神社の参拝や見学には特別な許可が必要です。なので、もし島の入り口のカギが開いていても、中には立ち入らないようご注意ください。

 

震災で流され、太平洋を7000キロ漂った鳥居。

この弁天島の厳島神社の鳥居の笠木は、東日本大震災で波にのまれてしまいました。波の高さは6メートルにも及び、大久喜漁港も大変な被害を受けました。この鳥居の笠木、広大な太平洋を旅をしました。震災発生から2年ものあいだ、太平洋を漂った鳥居が2013年春に流れ着いたのは、アメリカのオレゴン州ポートランド。鳥居は、八戸港から7000キロも離れた場所に流れ着いたのです。


ポートランドには、日本文化を紹介するアメリカ最大の施設「ポートランド日本庭園」があります。日本庭園の関係者は、笠木に刻まれた日本人の名前などを頼りに、持ち主を探しました。2014年5月には日本を訪れ、被災地を中心にくまなく探しましたが見つかりません。

そこで、2014年7月に日本の協力者が八戸市博物館に問い合わせてみると、笠木に刻まれた名前から大久喜のものであることが判明。そこから交流が始まり、2015年10月に笠木が帰国。さらに2016年4月には、弁天島の厳島神社に鳥居が再建されました。

大久喜の方に話を聞くと、日本庭園の関係者はやはり被害の大きかった岩手、宮城、福島を探していたようで、青森県のものだとは思っていなかったようです。
今回は許可を得て特別に立ち入らせてもらいましたが、大久喜の方は「震災から10年。ここでこうしてあなたが来たのもポートランドとのご縁のおかげだ。」と語りました。


今回初めて、許可をいただいて、関係者の案内のもとで島の内部に入らせていただきました。
ポートランドから帰ってきた鳥居は色が塗り替えられ、今でも堂々と弁天島に立っています。昭和の時代に作られた笠木に、平成に入ってから「Portland Japanese Garden」と、新しい文字が刻まれました。


ウミネコの繁殖地・・・ところが・・・

話によれば、弁天島は30年ほど前までは陸から完全に離れた島だったそうです。それが漁港の整備の一環でコンクリートで固められ、陸続きに。人間の手によって、大久喜の景色は様変わりしました。



弁天島では、毎年2月頃から8月ごろまで、蕪島と同じように無数のウミネコが飛来し、子育てをする姿が見られます。
毎年6月は雛が生まれるピークなので、関係者の方は「くれぐれも島に入らないように。そして雛が近くにいても絶対に踏まないように気を付けて」と呼びかけています。

 


しかしショックだったのは、足元を見渡しても雛が見当たらなかったこと。関係者の話によると、陸続きになったことでハクビシンなどの動物が島に入れるようになり、雛を襲っているのだそうです。中には、息を引き取った親鳥の姿もありました。
今すぐに対策が必要な状況ですが、なかなか事態は改善しないのだとか。ウミネコが危険にさらされるようになったのは、人間が島を陸続きにしてしまったから・・・とても胸が痛みました。状況の改善には、行政などの大きなサポートが必要だと感じました。


八戸の海は、ウミネコの生まれ故郷

渡り鳥であるウミネコは、1年間のうち2月中旬から8月上旬ごろまでの実に約6ヶ月間を蕪島や弁天島など八戸の海で過ごします。しかし現状として、今年生まれた弁天島の雛たちはほぼ全滅の模様。弁天島には、島に入った動物に襲われたと思われる息絶えた親鳥の姿がありました。



ウミネコたちにとっても、人間にとっても、八戸の海は生まれ故郷の大切な景色であり、暮らしや命を守る生命線でもあります。弁天島はきっと、漁業に携わる大久喜の人々や、ウミネコのことを見守っていることでしょう。
ポートランドと八戸の人々を繋いだ心温まる鳥居の物語・・・しかし、その一方で、ウミネコたちは大久喜の人々の思いとは裏腹に危険な状態にさらされているようです。私たち人間がすべきことは、まだまだありそうです。



スポンサーリンク


最後までお読みいただきありがとうございました♪
にほんブログ村 地域生活(街) 東北ブログ 八戸情報へ

1 件のコメント :

  1. お一人で調べてここまでの物語を書けるのはとてもすごいと思います!

    応援してます!!

    返信削除

コメントしてってね♪